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Date:2026-04-26 15:29 Editer:Yuzuki Hayashi

サボテン



作 林柚希

お父さんのパソコンで、「草の根ネット」
という、今でいうインターネットの国内版が当時はあった。

面白半分に使わせてもらっていたら、
とある男性とEメールを交わすようになった。
彼は大学院生で将来そのまま、
大学に残って研究を続けたいようだが、
私はしがないOL。

でも、植物の中でもサボテンが好きで意気投合した。
数年やり取りしているうちに、
PHSという携帯電話が流行だし、
実際に電話でやり取りすることになった。

プルル…。
彼「はい。」
私「サボテンさんですか?私いつもEメールでやり取りしている者です。」
彼「え!?本当に君なの!?」
私「そうです。ハンドルネームの美咲です。」
彼「僕、ハンドルネームでサボテンです。そっか。びっくりした。本当に電話くれたんだね。」
私「迷惑じゃなかったですか?」
彼「とんでもない。とても嬉しいです。僕こそ自分からかけた方がよかったよね?」
私「そんなことないですよ。ただ声が聞きたかったんです。ありがとうございます。」
彼「いえいえ。かわいい声だね。」
私「いえ、そんな…。」
彼「電話してくれたお礼に今度、実際に会いませんか?」
私「え!?実際に、ですか?」
彼「気が進まないなら、別にいいのですが…。」
私「いえ、ぜひ会いたいです!あ…。」
思わず力が入ってしまった、私。
彼は、くすくす笑って、
彼「じゃ、今度喫茶店で会いましょうか。」
私「そうですね。」
奇遇にも、二人とも東京23区内に住んでいたので待ち合わせを決めて電話を切った。
はぁ~、疲れた~~。
でも、心地のいい低い声で期待しちゃうなぁ。
あ、言えばよかった、ま、いいか。


実際に会ってみると、身長は私より高いけど、中肉中背で顔は普通の人だった。
声がかなり気に入っていた私はちょっとがっかりしたけど、でも会話はとても面白かった。
お互いの近況から始まって私は会社務めの話、彼は研究仲間などの話になったし
サボテンの話で盛り上がって、気が付くともう夕方をすぎてとっぷり日が暮れていたのだった。
お店を変えて、パブでカクテルを飲みながら、いろんな話をした。
正直、初日でこんなに打ち解けて話をしてしまうなんて思わなかった。
会社でも一緒に働く男性もいるけれど、こんなに昔から友達だったのかと、
思うような、気の合う男性と話せるとは思わなかった。
また、会う約束をして(実際お互い成人しているのでホテルとか誘われたらどうしようか迷ったけど何もなしで複雑…。)
帰途について、お風呂にゆっくり浸かる。
なんか、楽しかったなぁ。
このまんま、付き合えちゃったらどうしよ。
くふふ。

この後、何度か喫茶店で会ったりした後、植物園に出かけたりもした。
ここには、サボテンは大したことはないけれど、20年に一度咲く花というのがあるらしい。

ふたりともかなり期待して、ドキドキしたけれど、なんてことはない普通の花で、
二人とも、なぜか吹き出してしまった。
彼「なんか、普通だったね。」
私「普通だったよね。」
彼「期待しすぎたかなぁ。」
私「私も同じですよ~。」
彼「あ、もう「ですます体」で話すのはやめようよ。」
私「そうです、いえ、そうだね。」

この後も、ざっと植物園を見て回ったけれど、敷地が広いので都内とは思えない程うっそうと茂っていて、
電信柱や高層マンションも見えないありさまだった。
植物園を見終えた二人は、新宿まで出て、パブでビールを飲んだのだった。

二人「かんぱーい!」
彼「今日どうだった?」
私「あの花は普通だったけど、でも楽しかったよ。」
彼「また別の植物園に行かない?それとも映画とかの方がいいのかな。」
私「最近の映画ってイマイチだし…、そうだね、別の植物園もいいかも。」

暫くふたりして他愛のない話をして、お店をはしごして、ビールにチューハイ、焼酎、日本酒とあけていった。

彼「それでね、僕、ぶっちゃけて言うとね。」
私「うん?」
彼「今、彼女いないんだ。」
私「そうなんだ、私もいないよ。」
彼「だから、君に彼女になってもらいたいんだけど、どうかな。」
私「え…。」
彼「君にね、惚れちゃったみたい。」
私「わ、私もぶっちゃけちゃうと、好きになっちゃった。」

何気なく、彼が私の手に手を添えてくる。

彼「キス、してもいい?」
私「いや、さすがにここでは…。」
彼「あ、そうか。」

彼「ごめん、酒の力を借りて言っちゃったね。」
私「いえ、嬉しいで、す。」

お酒のせいなのか、告白のせいかわからない程、二人とも真っ赤だった。
彼も私もお酒は強い方のようだけど。

彼「そろそろ出ようか。」

お店を出た後、西新宿でちょっとぶらぶら手を繋いで歩いて、人影のまばらなところでキスした。
あ、久しぶりかも。
気持ちいいなぁ。
まだ別れたくないなぁ。
そうだ。

私「ゲームセンターでちょっと遊んでいきますか。」
彼「UFOキャッチャーあるね。僕、得意なんだ。」
私「へぇぇ、すごいなぁ、あ、このネコかわいいなぁ。」
彼「あ、これなら大得意!」

彼は、手慣れた手つきで、UFOキャッチャーで一つぬいぐるみを取った。
私「わ、かわいい。」
彼「まだ欲しいのある?」
私「いえ、これで十分!私も試そうかな。」

彼にレクチャーしてもらったけど、ぬいぐるみは全然取ることが出来なかった。
彼の教え方はうまいのだけど、私がヘタクソみたい。

私「せっかく教えてもらったのに、ごめんね。」
彼「いいって、次、別ので遊ぼうよ。」

彼と二人で拳銃を持って、ゾンビを倒したり、
彼の運転するレーシングカーを応援したり、
色んなゲームをして遊んだ。

彼といると、ほんと楽しい
でも、どうしよ終電も近いし…

彼「どうしたの?」
私「いえ、終電どうしようかと…」
彼「そっか、僕今日はずっと一緒にいたいな。」
私「私も!」

二人ともまた赤くなりつつ。

二人「じゃ、一緒にいようよ」
二人「あ、重なったね。」
彼「でも、ほんとにいいの?」
私「いいよ。うん、一緒にいたいから。」
彼「わかった、じゃ、ホテル探そっか。」
私「そ、そうだね。」

ゲームセンターを出て、少し歩いてホテル街を歩きはじめる。
カップルがそこそこ歩いてるので目立ちはしないけど、
なんだか恥ずかしい。
あちこちライトアップしてあって、「ご休憩」「ご宿泊」とある。

一軒のホテルに入って、上品な感じが気に入って、
二人で実際に宿泊してみることにした。

リゾートホテルかと思うような、ヨーロッパ調の調度品は上品だけど、
カラオケにゲームにビデオに「大人のおもちゃ」があるところがやはり、ラブホだろうか?
でもふたりとも歩き疲れた上に、お酒で酔っぱらっていたのでどうなるやら。
とりあえず、お風呂に入る。
じゃんけんして、私が先、彼が後に入る。
…と思ったら、途中から入ってきて
「やってきちゃった」って、もう!
なんだか、上手すぎる!
ひっかけられちゃった感がなくもないけど、ま、しょうがないかな。
彼も髪も髭も体も洗い終えて、一緒にお風呂に入る。
お風呂も七色に変化するライトが付いているので、
思い切って消してみると、あちらこちらが七色に変化してとてもキレイ!

私「あ、きれい」
彼「僕、君の方がいいと思うけどなっ。」
私「なんか上手いなぁ、ほんとに彼女いないのぉ?」
彼「いないって。」
私「あなたの体も意外と引き締まっていい体なんだね~」
彼「一応、鍛えているからね。」
私「研究者って籠ってばかりいるんじゃないの?」
彼「そうだから、たまに外で発散したくなるんだよ。」
私「なるほど。」
彼「君の体型もきれいだよ。」
私「顔は?」
彼「顔も好みだよ。」
私「嬉しいけど、なんか乗せられてる感があるなぁ。」
彼「単純に嬉しがってくれよ~。」
私「しょうがない、惚れた弱みかな~。」
彼「よかった~。」

二人とも、バスタオルで体をふき終わりバスローブに着替え終わり、布団に入る。
一応、両親には友人宅に泊まって帰るとは言ったが、しかし
ま、急展開だけど、いいよね?

二人でラジオをいじると「般若信教」まである。

私「へぇぇ、お経まであるんだね。」
彼「いつ聴くんだろうね?」

二人してぷっと笑った。
電気をローライトだけにして、二人だけの時間を一晩過ごした。

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